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インタビュー

世界が驚く中小企業テクノロジー 第1回「プラスチックごみが石油になる!?」

2015年07月02日

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コンビニのレジ袋、ファーストフード店のカップやストロー、ドラッグストアのシャンプー容器、ペットボトルのキャップなどなど……。日ごろ私たちが当たり前のように使い、使い終わったら捨ててしまう「プラスチックのゴミ」。これが全部“石油にリサイクルできる”ってご存じだろうか? まずは、こちらの動画をご覧いただきたい!

プラスチックごみ(廃プラ)を石油に戻す「廃プラスチック油化装置」。これがあれば、ゴミ問題はもちろん、世界の環境問題だって解決できるかも!? 開発メーカー、株式会社ブレスト代表の伊東昭典さんに、お話を伺った。

プラスチックの種類はたくさんある

神奈川県平塚市にある株式会社ブレストは、2001年に創業した社員11名のベンチャー企業。油化装置の技術と製造で現在40カ国と取引を行っている。上記動画で紹介された小型油化装置「Be-h」は2005年に実用化された。動画を見たという人から問い合わせが相次ぎ、今も国内外から商談のメールがひっきりなしに寄せられているという。

伊東さん
「実は日本でプラスチックを石油に戻す技術の研究は、オイルショックが起こった70年代から進められていました。石油を原料としてプラスチックが作り出せる以上、その逆の手順でプラスチックを石油に戻すことも可能なはず、というわけです。いくつもの企業が実用化を目指して研究を進めていましたが、結局はほとんどが撤退していきました。廃プラの油化技術を実用化するためには、乗り越えるべき大きなハードルがあったからです」

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株式会社ブレスト代表の伊東昭典さん

ところで、プラスチックには様々な種類があるのをご存じだろうか? 飲料用ボトルでおなじみのPETこと「ポリエチレンテレフタレート」、バケツや洗面器に使われる「ポリエチレン」、地下を通る下水管などに使われる「ポリ塩化ビニル」、発砲スチロールの原料となる「ポリスチレン」、メガネのレンズに用いられる「アクリル樹脂」などなど……。私たちは原料に石油が使われているという理由で、便宜的にそれらをまとめて「プラスチック」と呼んでいるが、実はプラスチックには無数の種類がある。そして、廃プラを油化する場合には、そのプラスチックの「種類の多さ」が問題となるのだ。

伊東さん
「プラスチックの種類によって熱分解を起こす温度が異なるためです。有毒なガスが発生する場合もあります。たとえば、ポリ塩化ビニルは330度前後で熱分解を始めるのですが、この時、有害な塩化水素を発生させます。塩化水素は水に溶けて塩酸となり、装置の配管を溶かして穴を開けてしまうんですね。また、ペットボトルや卵パックなどに使われているPETは、テレフタル酸や安息香酸(あんそくこうさん)という固形物質を発生させ、配管を詰まらせたり、水と結合して金属腐食の原因となったりします。一般的には「プラスチック」と呼び、一緒くたにされがちですが、油化には不適切なプラスチックもあるので注意が必要です」

日本の廃プラの半分は油化できる?

そこで伊東さんは、油化装置に極力損傷を与えず、効率的に油化できる廃プラだけを選別した。それが「ポリプロピレン(PP)」と「ポリエチレン(PE)」だ。

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PPとPEの廃プラ。これがすべて石油に戻る。
伊東さん
「“油化”には、廃プラを分解した際、その40%が石油になり、オフガス(熱分解で生じる排ガス)の割合が25%未満に収まらなければならないという定義があります。PPとPEは、その条件を満たすだけでなく、熱分解が始まる温度も350~400度と比較的低温で、装置を損傷させる有毒ガスも発生しないことから、最も油化に適した廃プラでした」

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旭化成パックスが製造しているPP製カップ。

一般社団法人プラスチック循環利用協会によると、日本の廃プラの総排出量は年間約940万トン(2013年時点)。そのうち、PPとPEは5~6割を占めるという。これをすべて油化できれば、日本にとって大きなエネルギー資源となることは言うまでもない。しかし、この2種類だけを膨大な廃プラの中から、効率的に回収する方法がなかったため、油化技術には成功していた企業も、結局は撤退の道を選ばざるを得なかった。

伊東さん
「毎日大量に捨てられる廃プラの中から、PPとPEだけをどうやって選別するのか。また、その廃プラから純度の高い石油を取り出すためには、水分や炭化物などの不純物を取り除く必要もあります。こうした作業にかかるコストから、採算が得られないと判断した企業は多かったようですね」

バーナーではなく、ヒーターを使うというアイデア

こうした問題を抱えながらも伊東さんが起業を決意したのには、2000年に完全施行された「容器包装リサイクル法」の影響があった。この法律で、消費者、市町村、事業者それぞれに容器包装の分別、回収、再商品化などの義務を課したことで、日本で廃プラを分別する機運が高まった。

伊東さん
「これまで油化技術を研究してきた人たちの失敗例に学びながら、今がチャンスだと思って起業しました」

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商品の裏側などに表示されている識別マーク。
PPやPEと表示されていれば、それは油化可能なプラスチックだ。

起業後の2002年、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業に採択されたことで、廃プラスチック油化技術のプロジェクトがスタートした。ところがプロジェクトは最初から困難を強いられたそう。

伊東さん
「大型プラントを想定した油化装置で、あるメーカーの製品を購入して実験を行ったのですが、プラスチックを入れる炉の温度を上げるために、バーナーで1200度まで加熱しなければならず、そのための専門的な知識と複雑な技術、そして運営に莫大なコストが必要でした。また、加熱の際に大量のCO2を排出してしまうなど、環境面にも問題があり、採算の取れない事業になってしまったのです。そこで、バーナーではなく、ヒーターを使った新型を開発することにしました。ヒーターはバーナーほど高温にできませんが、温度調節がしやすく、設置しやすいというメリットがありました。炉の周囲にまきつけるように設置することで温度伝達の効率性を上げ、その結果400度程度での油化が可能になりました」

この時に生まれた「ヒーターを使う」という発想は、冒頭で紹介した「Be-h」の開発にも採用され、ブレストが製造する油化装置の大きな特長となった。

伊東さん
「「Be-h」は“Be home”の略で、一家に一台置ける油化装置というコンセプトで開発しました。それだけに、パネル操作で誰でも安全に使えるようにすることが目的のひとつでした。また、ヒーターを採用することで二酸化炭素をなるべく排出せず、クリーンに油化できる装置にしたことも成功の理由になったと思います」

リサイクルの可能性が広がる「ミックスオイル」

最近では、廃プラから生まれる混合油だけで動く発電機を、発電機メーカーと共同で開発した。油1リットルあたり、3.4~3.7kWhの発電が可能で、廃プラが排出される工場などに、油化装置と併せて設置することを想定している。目標は、廃プラが排出される限り動き続ける”自産自消型”の発電機だ。さらに今後は、廃プラにこだわらず、てんぷら油などの廃食用油から生まれるリサイクル油と混ぜて使っても発電可能な、「ミックスオイル」の研究・開発も産学連携で進む予定だとか。

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発電機メーカーのデンヨーと開発した廃プラ油で動く発電機。
伊東さん
「廃プラ油と廃食用油を混ぜて使うことができれば、ゴミ処理の問題と、エネルギー供給の問題、さらにエコにも配慮した“一石三鳥”のメリットがあるはず。これからも環境に寄与する姿勢を機軸として、ビジネスモデルを構築していきたいですね」

なお、7月18~7月31日まで、東京・お台場で開催されるイベント「お台場夢大陸~ドリームメガナツマツリ~」の「グルメ大陸」にて、廃プラスチック油化装置のデモンストレーションが行われる予定だ。

「お台場夢大陸~ドリームメガナツマツリ~」公式サイト
http://www.fujitv.co.jp/yumetairiku/index.html

(text:Takimoto/kwc)

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2017/07/03
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