利きレゾ
2015年07月01日
ハイレゾの音は、ホントに素晴らしいのか? CDや圧縮音源の音は、そんなにダメなのか? いったい何がどう違うのか?
音楽好きのみなさんに、実際に聴き比べて、どちらがハイレゾだと思うか答えてもらいました。
- 今回使用した音源
The Beatles
より、「Abbey Road」「Let It Be」
はっぴいえんど
より、「はっぴいえんど」「風街ろまん」
小松玲子
e-onkyo music http://www.e-onkyo.com/
- 試聴環境
仮説その1:20代男性の耳にはCDのほうが心地いい!?
[被験者1] Aさん(23歳)
ガレージロックとファンクが好き。
「あー、もうダメっすねえ、オレ!」
1 The Beatles「Come Together」
「こっちのほうが音に奥行きがある気がしたんで、こっちがハイレゾですよね」→ ×
2 The Beatles「The Long And Winding Road」
「いや、こっちのほうが深みのある音がしてました」→ ×
3 はっぴいえんど「風をあつめて」
「これは、わかりました。ハイレゾっていう音でしたから」→ ×
4 小松玲子「秘かな水瓶」
「今度こそ大丈夫です。音が透き通ってました。音の数が多いっていうか、音と音の間に隙間がなくて、びっしり埋まっている感じでした。もう1曲、はっぴいえんど聴いちゃっていいですか?」→ ○
5 はっぴいえんど「しんしんしん」
「もう、わかりました。こっちがハイレゾですよね」→ ×
TOTAL 5戦1勝4敗
[被験者2]Kさん(29歳)
好きなアーティストは吉田拓郎とジョージ・ハリスン。
「やっぱりジョージは裏切らないのよネ」
1 はっぴいえんど「風をあつめて」
「こっちは圧迫感があるっていうか、ウルサイ感じがしたんで、もう一つのほうがハイレゾじゃないですかね」→ ×
2 はっぴいえんど「はいからはくち」
「先に聴いたほうはリラックスできる感じ。あとから聴いたほうは、なんかドキドキして落ち着かない感じ。最初のがハイレゾでしょう!」→ ×
3 The Beatles「The Long And Winding Road」
「最初のはよかった。音楽を聴いてる!って感じ。あとのは、集中しないで音楽を聞き流してるときみたいな感じがしました。最初のがハイレゾ」→ ×
4 The Beatles「Here Comes The Sun」
「あ、これ、僕がビートルズでいちばん好きな曲です。ジョージ・ハリスンが好きなんですよ、僕。で、この曲は先に聴いたほうが好きですね。まさに陽がさしている感じ。ジョージの声もよく聴こえて奥行きがありました」→ ○
5 小松玲子「秘かな水瓶」
「先に聴いたほうが好きです。聴いてて、いい意味でクラクラしました。ちょっとコワイ感じの音で、それがよかった。あとに聴いたのは、なんだかマイルドになっちゃっている気がしたので、初めのがハイレゾじゃないでしょうか」→ ×
TOTAL 5戦1勝4敗
仮説その2:実は女性のほうがハイレゾ好きかも?
[被験者3]Kさん(35歳)
音楽がなくては生きてはゆけぬ超ミュージックジャンキー。
「ロックがこんなにキレイな音になっちゃうのね!」
1 The Beatles「The Long And Winding Road」
「高い音も、ストリングスの音も、ポール・マッカートニーのボーカルも、すべてがクリア。こっちがハイレゾで間違いない!」→ ○
2 The Beatles「Come Together」
「最初のは、全体がまとまってダンゴになっていたのでCDかな。あとのほうが、音の分離がよくて、ひとつひとつの音がはっきりしていたので、ハイレゾ。高音の違いがわかりやすいね」→ ×
3 はっぴいえんど「風をあつめて」
「先に聴いたほうが、全体にキレイな印象だなあ。特にオルガンの音がよかった。こっちがハイレゾ」→ ×
4 はっぴいえんど「空いろのくれよん」
「うーん。正直、違いがわからなかった……」→ ×
5小松玲子「秘かな水瓶」
「最初のほうは、高い音が揺れていた。ちょっとヘンな残響音や雑音を感じた。あとのほうは揺らぎがあまりなくて、雑味が少ない。クリアだったので、あとがハイレゾ」→ ○
TOTAL 5戦2勝3敗
[被験者4]Hさん(24歳)
ピアノ、クラリネット、バンドネオンなどの楽器演奏が趣味。
「クリア! 今まで聴こえていなかった音が聴こえた。そこにあったか、その音!って感じ」
1 The Beatles「Here Comes The Sun」
「最初のは、ひとつひとつの音がしっかり聴こえました。あとのほうは、まろやか。全体的なまとまりがありました。最初のほうがハイレゾですか?」→ ×
2 The Beatles「The Long And Winding Road」
「あとに聴いたほうは、オーケストラの音が包み込むように聴こえてきたので、ハイレゾだと思います。違いがわかりやすかったです」→ ○
3 はっぴいえんど「風をあつめて」
「楽器のバランスが全然違いました。初めのほうは、アコースティックギターが繊細に聴こえました。機械的じゃない生の音が、しっかり入っていた感じ。あとのほうは、ベースとオルガンが目立ちました。なので、初めのがハイレゾ」→ ○
4 はっぴいえんど「空いろのくれよん」
「初めのがCDの音で、それを聴いたときに『ハイレゾはこういうふうに聴こえるんだろうな』と思った、そのとおりの音が聴こえてきました! CDではオルガンがベースにかき消されていましたが、ハイレゾではちゃんと聴こえました。スティールギターのビブラートというか、音の中にある揺らぎ、うねりがよくわかりました」
5 小松玲子「秘かな水瓶」
「先に聴いたのは、もやもやして頭にウワーってくる感じ。あとに聴いたのはクリアで、遠くで鳴っている音がしっかり届いてくる感じなので、これがハイレゾ」→ ○
TOTAL 5戦4勝1敗
仮説その3:30代男性の耳は、きっとハイレゾの素晴らしさを聴き取れる!はず……
[被験者5]Mさん(35歳)
学生時代はバンドでギターをプレイ。レディオヘッドが好きだった。
「いやー、まいったなあ……。自信あったんだけど……」
1 The Beatles「Here Comes The Sun」
「最初のほうが、音に奥行きがあったかな。あとに聴いたほうは、奥行きがない感じ」→ ×
2 The Beatles「Because」
「こっちはノイズが多い気がしたんで、もうひとつがハイレゾ?」→ ×
3 はっぴいえんど「風をあつめて」
「やばい。わからなくなってきた……。もう1回、最初のビートルズ聴かせて」→ ×
4 The Beatles「Here Comes The Sun」
「……」→ ×
5 小松玲子「秘かな水瓶」
「初めに聴いたのがいい気がするなあ……」→ ×
TOTAL 5戦0勝5敗
[被験者6]Kさん(30歳)
「クリアで迫力があって、全然音が違う! 特に生楽器の音はナマナマしいほど」
1 The Beatles「Come Together」
「ドラムのアタック感、余韻を残しながら消えていくベースの音。これがハイレゾでしょうね」→ ○
2 The Beatles「Two Of Us」
「アコースティックギターの音がクリア。どの弦を弾いているのか、よくわかります。音の違いが分かりやすい」→ ○
3 The Beatles「I’ve Got A Feeling」
「メンバーがいっせいに息を吸って、歌い出す瞬間がリアルに伝わってきます。すぐ目の前に4人が立って歌っているような臨場感! やっぱりハイレゾは違いますね」→ ○
4 はっぴいえんど「空いろのくれよん」
「ハイレゾは低音が効いてますね。スティールギターの音に伸びがあり、サイケデリックですらあります」→ ○
5 はっぴいえんど「しんしんしん」
「あとのほうがハイレゾで間違いないでしょう。パーカッシブなストロークでリフを刻むアコギ。その低音に伸びがあって、迫力十分。ドラムも音がでかくて、近くで鳴っている感じ」→ ○
TOTAL 5戦5勝0敗
- 結果まとめ
全問正解者もいれば全問不正解者もいるという結果になりました。同じ音を聴いても、予想以上に印象は人それぞれ異なるのですね。
今回はDACとアンプを内蔵したヘッドフォンとPCを組み合わせた環境でしたが、出力をスピーカーに替えたり、ハイレゾ対応プレーヤーで再生したりすれば、また違う聴こえ方をするのかもしれません。また、アナログレコードを聴き込んできた世代の人を対象に“利きレゾ”するのも、興味深いです。
というわけで、次回は40代以上の被験者を対象に、スピーカーを使って“利きレゾ”する予定です。どうぞお楽しみに!
(text:服部啓一/KWC)